05

最近の名字さんはお菓子作りに気合いが入っているのか初期の頃のクッキーやマフィンといった飾り気のないものではなく、アイシングクッキーやステンドグラスクッキーなど見た目が華やかなものや手の込んだタルトやケーキまでくれるようになった。

流石に毎日もらうのも申し訳ないかなと行かなかった日もあったのだが、そういう日は決まって部活前に手渡された。

今日も昼休みにもらってきて、ウキウキした気分で自席に戻ると珍しくツムが俺の席に座っとった。

「どこ行っとったんや」

不機嫌を隠さないで言う片割れにため息が出る。

「なんでもええやろ」

「は?なんやその態度…って、ん?なんかええ匂いせん?」

「気のせいちゃう」

「いやいや、絶対ええ香りするやろ」

袋を背中に隠して早く向こうに行けと手を振れば、めざとく見つけられた。

「なんやそれ」

「なんでもあらへん」

頑なに引き下がらないツムに仕方なく中身を見せれば「俺も食べたい」と駄々をこねられた。

「これは俺がもらったもんやからあげへん!」

「そんなにあんのにか!?ケチか!あ、最近サム機嫌いいのこれのおかげか?」

「別にツムには関係あらへんやろ」

「誰からなん?」

「知らん」

「知らんわけあるか!!」

ギャンギャン騒ぐツムから逃れるために教室から走って出れば、タイミングの悪いことに階段に名字さんがおった。

目線があったのでお互い会釈したのが悪かった。

「なんや、サムが前言っとった運命の出会いってあの子か」

普段の記憶力なんか地を張ってんのにこういうくだらないことだけは覚えてるツムに嫌な顔をしたら、ニヤニヤと楽しそうに「ええもん知ったなあ」と言われた。

「つかお前まさか毎日もらっとんのか?後輩にたかるとか最低やな!」

「くれるんや!!」

「強請ったんちゃうやろな」

ツムの言葉に、出会った時を思い出して言葉に詰まった。
いや、当初は確かに無理矢理もらっていた気がするけど今はちゃんとくれているはず。

顔に迷いがでたのを見て「人のこと人でなしって言う割に自分も大概やな!」と言ってきたツムを思いっきり蹴飛ばした。

しかもそれを夕飯の席でオカンにバラされて死ぬほど怒られた。

「ちゃんとお礼もせんでもらうのはアカンって言うとるやろ」

オカンの言葉は尤もで、今度何かきちんとお礼をしようと思った。



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