06

オカンに怒られたのもあって、次の日名字さんの教室へお礼はなにがいいんやろかと考えながら向かった。

俺が顔を出せばパタパタとタッパーを持って走ってきて「どうぞ」と差し出される。
日に日に豪華になっていくそれに正直な腹はぐ〜と大きな音を立てた。

タッパーをあければ今日はロールケーキで、向こうの名字さんの机には保冷剤が置いてあった。
生クリームの入ったロールケーキはみるからに美味しそうで、我慢できずにカットされた一切れを手にとって頬張りながら聞いてみた。

「名字さん、いつももらってばっかやと悪いしなんかお礼したいんやけど」

いつもなら受け取ってそのまま教室へと帰るのだけれど、今日はそうもいかない。

名字さんは俺の問いに少し考えて「お菓子の勉強になってるのでお礼は特にいらないです」と言った。

「そうは言うても毎日もらうのもなんや悪くてなあ」

「え、じゃあ小麦粉…とか…」

「それはお礼やなくて材料やん!いや、それも渡すけども!!」

「あ、じゃあ付き合ってください」

「え、え!?」

とんでもないことをサラッという名字さんに変なところから声がでた。

「材料買うと重くてかなわないので部活のない日に荷物持っていただけると助かります」

「あ、そういう…」

「だめですか?」

「ダメとちゃうよ!ええよ!」

や、でもそれはお礼なのか…?と疑問がよぎったけれどとりあえず名字さんが助かるならええかと了承した。

「ほな、連絡先交換しよ」

そうスマホを出せば目をパチパチと瞬いて、名字さんも自身のスマホを取り出す。
お互いのスマホに相手のアイコンが追加されたのを確認して「今度連絡するな!」と教室を後にした。

本当のお礼は可愛いアクセサリーでもあげればええかと、休日にショッピングモールへ行こうと思った。



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