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「今日の日直誰やねん、黒板消しとらんで」

「サッカー部と吹奏楽部やから今大事な時期やから頭いっぱいでそのまま部活行ってもうたんかな?私消しとくからええよ」

日直の二人に非難が向けられたときに、名前がサラッとそう言った。

普通だったらサボってると怒られるところなのに「部活忙しそうやもんね、なら仕方ないか」とみんな納得した。

こういうところ名前は本当に上手くて、人に向けられる敵意を流すのに長けている。
俺も知らないところで助けられているんだろうなと感じることが多々ある。

名前がいるだけで教室の空気は圧倒的に澄むのだ。

早速黒板を消そうとする名前に、スパダリスパダリと心の中で唱えながら「俺も手伝うで」と声をかけた。

一瞬珍妙なものを見る顔をされたが「助かるわあ」と笑ってくれたので多分セーフ。

前の黒板を消し終えて、後ろを消している名前の届かないところをフォローしようと向かったら一生懸命背伸びしている名前のスカートの中身が見えた。

「色気のないの履いとるなあ」

思わず出た言葉にハッと口を押さえたが時すでに遅し。
黒板消しが顔面に飛んできて「手が滑ってもうた、ごめんね?」という背筋が凍るような冷たい声で言われた。

途中までは上手くいっとったはずなのになんでや。



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