08
買ったからには渡さなければいけない。
次の日のお昼に昨日買ったエプロンが入った袋を持って名字さんのところへと向かった。
別にただのお礼なのだから緊張する必要もないし、普通に渡すだけ。
頭ではわかっていても自分が選んだものを彼女が気に入ってくれるかが気になってしまい今日は朝からどうも落ち着かない。
名字さんの教室の前でどうやって渡そうか困ってウロウロしていたら、流石に2年生の俺がいるのは目立ったようで「名前、先輩来とるよ」と中から名字さんを呼んでくれた。
「先輩、どうしたんですか?あ、これ今日のお菓子です」
いつものように教室へと入らない俺に名字さんは不思議そうに尋ね、お菓子の袋を渡してくれた。
「あー、その、これ…いつものお礼にと思って買うたんやけど、気に入らなかったら捨ててもええから!ほな!!」
押し付けるように渡して、名字さんの顔も見ずに自分の教室へと逃げた。
今まで差し入れをくれた女の子たちはすごい勇気を振り絞っていたのだなと、何も考えずに受け取っていた自分を少し反省した。
次から貰うときはお礼をきちんと言うようにしよう。
逃げ帰った自分の教室で、落ち着かせようと深呼吸をするも心臓のドキドキはなかなか収まってくれない。
どうしてこんなにも心臓が速るのだろうか。
そんなことを考えていたら角名に「治どうしたの、顔真っ赤じゃん。好きな子でもできたの?」と揶揄われて、初めて名字さんのことを意識している自分に気づいた。
お菓子の美味しさからツムには運命の出会いなんて言ってたけれど、まさか恋愛面でもそう思うことになるなんて思わなかった。
黙っている俺に「あれ、ビンゴ?」なんてニヤニヤしながら聞く角名に「そうかもしれん」と小さな声で返すことしかできなかった。
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