06

家に帰ると母親が玄関に顔を出して「名前ちゃんご飯何食べたい〜?」と嬉しそうに聞いてきた。

「私はなんでも…あ、松川くんは何が好きなの?」

「え、俺ですか?」

「いっくんはチーズインハンバーグよね〜。いつまで経ってもお子様なのよ、この子」

急にバラされた好物に、何も名字先輩に言わなくてもいいじゃないかと嘆く。

子どもっぽいのは理解しているから、あまり言いたくないのだ。
どうせ見た目の割に子どもっぽいんだねって笑われるのが関の山だ。

ため息をついて名字先輩を見たら「ハンバーグ、私もお手伝いできますか?」と母へ聞いていた。

「あら、いいわよ〜!いっくんよかったわねえ!」

「松川くんに美味しいって言ってもらえるようにがんばるね」

そう残して母と二人でキッチンへと消えていった先輩に、今まで感じたことのない感情を覚えた。

名字先輩的にはお礼のつもりなのかもしれないけれど、その言い方は誤解を招きますよなんていう俺の思いは先輩には届かないだろう。


結局先輩はお父様のお骨を持っていくことを選んだので、仏壇のある部屋へと後飾りを設置することになった。

この家は先輩の家ではないけれど、多分先輩の寝泊まりしている部屋に置くにはまだ気持ちの整理がついていないだろうからと提案してみた。

「いいの?」

遠慮がちに聞いてきた先輩だったけれど、故人も仏壇の前が落ち着きますよなんていう適当な返しに一応納得したみたいで「松川くんに任せるね」と一任してもらえた。

母からは好きにしていいと了承は得ているし、父は母のやることに反対はしないだろう。


設置も完了してお花を生けている時にキッチンの方から「ご飯よ〜」と大きい声が聞こえた。

気づけばもう夕飯の時間で、デミグラスソースのいい香りが鼻をつく。

「今行く」と返し、祭壇にお線香をあげて拝んだ。

『娘さんの平穏を願っていてください』

俺なんかが言う言葉じゃないんだろうけど、先輩が前を向き出した今、亡くなったお父様にもそう願ってほしかった。

亡くなってしまった以上難しいのかもしれないけれど、憎んでいたわけでないのならその蟠りが少しでもなくなればいい。



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