02

次はいつ会えるんやろとわくわくしながら朝からお店の準備をしとったら、案外その時は早く来た。

夜のピークタイムもすぎた時間、傘を持ったあの子が扉を開けた。
「いらっしゃいませ〜」といつも通りの挨拶と、覚えとるよという意味合いも含めて「昨日の傘の子やんな?」と声をかける。

ぺこっとお辞儀をして、彼女は俺にお礼だと紙袋をくれた。
なんてええこなんや!と感動するが態度には出さないで「別に気にせんでもよかったのに。でもここのお菓子好きやから嬉しいわ」と当たり障りのないような言葉を紡ぐ。

もっと喜んだ方がよかったか?とか思うがまだ会って二回目、急いだらいかん。
ゆっくり仲良くなるんや。

カウンターへ案内して、オススメを聞かれたのでネギトロを勧める。
勧めた後で昨日もネギトロ食べとったやん!アホか俺は!と思うも昨日も食べてたからなんて訂正すれば気持ち悪いことこの上ない。

注文されたネギトロとおかかを渡して、二回目でも美味しく食べてくれるんやろかと思わずじっと見てしまった。

視線に気づいた彼女が気まずそうに「あの…なんですか…」というので「気にせんでええよ」と言うも、気にせんでええてなんやねん!無理やろ!と頭を抱えたくなる。
ポンコツか!!

とりあえず彼女は俺のことを気にせんようおにぎりを食べ始めてくれた。
相変わらず美味そうに食ってくれはるなあと思ってたら言葉に出ていたらしい、顔を俺の方にむけ驚いた目をしていた。

しまった、やらかした。
なんとか話題を逸らそうと思い、「おべんとくっついとるで」と言うと彼女は慌てて鏡をとりだした。

「フッフ、慌てん坊さんやな」と言えば顔を真っ赤にして俯いてしまった。
可愛いがすぎる…。

食べ終えてお会計をお願いしますと言われ、会計を済ます。
でもこれで終わりにしてたまるかと「おまけ」と言って無理矢理お土産を渡す。
中にはさっき急いで書いたLINEのIDを入れてある。
頼む、チャラいとか思わんでくれ。

しばらくすると友達追加の文字がきとって、神よ!と天を仰いだ。
メッセージも来ないかとずっとソワソワしとったけど、その日は来ることはなかった。

いやでも友達追加してくれたってことはLINEしてくれる気があるってことやんな?
一喜一憂して騒いどったらツムに「サムうっさいねん!」と怒られた。
浮いた話のひとつもない片割れに「ツムにはまだわからんやろなあ」と哀れんだ声で言うと「意味わからん、キショ」と返された。



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