04

あまりにも上手くいかない作戦にもう心は半ば折れかかっていて、そんな気分を紛らわそうとバレー部のみんなで夏祭りへと出向いた。

珍しく北さんもノってくれて、レギュラーメンバー総出で行くことになった。

背の高い男らが頭に狐のお面をつけて歩く様はさながら百鬼夜行。
上から下がる提灯のぼんやりとした灯りはとても雰囲気がある。

屋台は賑わっていて、右からも左からも美味しそうな香りが漂ってきてどれから食べようか迷っていると、少し先にしゃがんで困っている女の子がおった。

遠目なのでわかりにくいが、多分名前だと思う。

俺が動くよりも早く北さんが「鼻緒がとれたんか」と名前の元へ走り声をかけた。

北さんと名前に面識はないはずなので、困っているからただ助けただけなのだろう。

わかってはいる。
わかってはいるのだ。

でも背の低い名前と平均身長より少しだけ高い北さんはお似合いの身長差で、お互い似た色合いの浴衣を着ていて側からみたら仲の良いカップルのようだった。

慣れているのか巾着から薄手のハンカチと財布を取り出し、名前の足を自身の膝へ置いて直していく。

ものの数分だったと思う。

「ほら、これで歩けるようになったで」

北さんが名前に手を貸して立たせると、名前は嬉しそうに「ほんまや!ありがとうございます!」と北さんへと微笑んだ。

俺がここ何日間か欲しかった笑顔があまりにも簡単に北さんへと向けられたことで、俺の心はポキリと折れた。

「あれ、治くん?」

鼻緒が直ったことでご機嫌な名前は、漸く俺に気付いて声をかけてきた。

「ってことは北先輩ですか?」

「せやで。治の知り合いやったんか」

「同じクラスなんです」

偶然やなあ、と笑う名前にどういう顔をしたらいいのかわからない。

俺が頑張ったところで北さんみたいに自然に人を助けることはできないし、余計なことばかり言って傷つけてしまう。

名前の望むスパダリなんか最初から俺には無理やったんや。



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