03
とりあえず情報収集やと思ってサムに「名字さんて知ってるか?」と聞けば、「俺のクラスにおる名字さんのこと言ってるん?」と聞き返された。
「茶色い髪で、肩くらいの長さの背の低い女子やねんけど」
「あー、そんなら名字さんやな。ツム知り合いやったん?」
「いや、俺は知らへん」
「知らんのに聞くんか」
「知らんから聞いたんや」
何言ってんだこいつという顔で俺のことを見るサムに腹が立ちつつも「助かったわ」とお礼を言ったら「雨でも降るんか…?」と失礼なことを言われた。
サムのクラスなら隣やしすぐ捕まるやろ。
そう思っていたのが甘かった。
姿は見かける。
声をかけようとすると…いや、教室に足を踏み入れた時点でいなくなる。
しかも小さいからかちょこまかと人と人との間を縫って走るのが上手い。
足の速さなら絶対俺の方が速いはずなのに追いつかない。
「逃げられとんな」
「なんやねんアイツ!!」
「侑どんだけ嫌われてんの。ウケるんだけど」
角名もサムも毎時間逃げられてるのを見てるんだから、捕まえといてくれればええのに絶対それをしないで俺が困ってるのを楽しそうに見ている。
「俺なんかしたか!?」
「そんだけデカい図体で追っかけたら怖いんじゃないの」
「サムとは話すんやろ?」
「俺はツムと違って優しいからな」
「俺かて優しいわ!」
「ってかそもそもなんで追いかけてんの?」
角名にそう聞かれ、少し考えて「逃げるから…?」とこたえれば二人から「最低」とすごい顔をされた。
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