04
最近侑くんに追いかけられる。
一回声をかけられた時に逃げたのがいけなかったみたいで、毎時間教室に来ては私のことを捕まえにくる。
最初話しかけられた時は憧れの人に声をかけられて驚いたのだ。
しかも背の低い私と違って侑くんはとても大きい。
顔も首をかなり上にしないと見えないのに、それが走って追いかけてきたら誰だって逃げると思う。
「名字さんは俺とは話すのにツムからは逃げるんやなあ」
揶揄うような口調でいう治くんに「治くんは目線合わせて話してくれるもん。あと追いかけてこない」と言ったら角名くんに大声で笑われた。
「侑は逃げるから追いかけるって言ってたよ」
「追いかけるから逃げるんやって」
「卵が先か鶏が先かみたいな話やな」
「あ、ほら噂をすれば」
眉間に皺を寄せながら私めがけて走ってくるのは本当に怖い。
憧れの人と仲良くなりたい気持ちもあるけど、それ以上に本能が逃げろと言っている。
「私、もう行くな」
「行くってどこに。ここ教室だけど」
楽しそうに笑う角名くんに「うっさいわ」と返して教室から走って逃げた。
「あ!コラ!待たんかいボケ!!」
ああ、ほらまたそうやって追いかけてくる。
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