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小さい頃に近所の子たちとふざけて木に登って、ほんのはずみで木から真っ逆さまに落ちてしまい視界が真っ黒になった。

次に目を覚ました時には落ちたことしか覚えていなくて、目の前で泣いて喜ぶ大人が自分の両親だということもわからなくなっていた。

病室には両親のほかに二人の男の子とそのお母さんらしき人がいて、私の名前を呼んで泣いて謝っていたのが印象的だった。

母と父は「記憶がなくても名前は私たちの大切な子どもだよ」と笑い、幼いながらに素敵な両親の元へと生まれたものだと思った。

退院してからも私の記憶は戻らなくて、クラスの子たちとどこかギクシャクしてしまい、それを不憫に思った両親が「引っ越そうか」と私に言ってくれた。

そこから誰も知り合いのいない東京へと引っ越した私は楽しく過ごし、大人になるまで記憶を失ったことをすっかり忘れていた。

小さい頃私がいたのはどこの県だったのかも今となってはわからなくて、この先も思い出すことはないんだとこの時の私はそう思っていた。



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