02

「尼崎ですか?」

「うん、支店の人が一人産休に入るから名字さんどうかなって」

「私でよければ」

「そう?じゃあ次の内示で発表されるからそれまでに引越しの手配とか頼むね」

そう言われたのが一週間前。
そして今日、その内示が発表された。

転勤まであと二週間しかないなか、引っ越しの準備や引き継ぎの資料を作ったりと忙しかった。

週末には一応親へも直接報告をしに行こうと久々に実家へと帰った。

「転勤?」

「うん、産休に入る人がいるみたいでその代わりにどうかって言われたの」

「へ〜、どこに行くの?」

「尼崎だよ。兵庫県」

「あら」

「え、なに?どうかした?」

「あらあらあら」

母は場所を告げた時、本当に驚いた顔をした。

理由を聞いてもこたえてはくれなかったけれど「運命かしらねえ」なんて呟いていたのがやけに心に残った。

初めて東京から離れるので、期待半分不安半分。
新天地でもうまくやっていけたらいいなと思った。



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