03
異動先の部署は上司や先輩も優しくて、特段困ることはなかった。
仕事も慣れてきて人間関係も大体把握できてきた時に、先輩からバレーボールの観戦に誘われた。
「ブラックジャッカルっていうチームがあってな、今めっちゃハマってるんやけど名前ちゃん一緒に観に行かへん?」
先輩のお誘いは、まだ土地勘もなく友だちもいない私にとって“誰かとどこかにいく”休日の過ごし方はとても魅力的だった。
「私でよければ是非行きたいです」
「ほんま?バレーボールのルールとかわかる?」
「幼馴染がバレーボール部だったので高校までは試合も観に行ってました」
「高校バレーもええよな!春高とか東京体育館まで行ったりもしたで!」
お昼ご飯を先輩と食べながらそんな話をしていたら、幼馴染を応援しに行った春高の東京体育館が思い起こされた。
二人はもうバレーを続けてはいないけれど、またバレーを観るのも悪くないかもしれない。
そして試合当日、BJのユニフォームを着て待ち合わせ場所に来た先輩に「雰囲気だけでも楽しめるかと思って」と手渡されたのはお揃いのユニフォームで、「最後サイン書いてもらえたりもするから気に入ったら書いてもらうとええよ」と言われた。
「え、でもこれ先輩のじゃないんですか?」
「それ友だちにと思って買ったんやけどサイズが小さくて着れへんかったんや。名前ちゃんならいけると思うからもしよかったらもらってくれへん?」
「いいんですか?」
「その人が名前ちゃんの推しになるかはわからへんけどな!」
楽しそうに笑う先輩に「ありがとうございます」と伝え、トイレでそのTシャツへと袖を通した。
ユニフォームには13とMIYAという名前が大きく書かれていて、折角だからこの選手を応援してみようと思った。
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