07

今度こそ上手くいくと思ったのに一発で見破られた。

「名字さんすごすぎ」

さっきから腹を抱えて笑い転げている角名に「何がいけなかったんや」と呟いたら「最早侑センサーでもついてるとしか思えない」と返された。

予鈴もなる時間で、仕方なしに自分の教室へと戻ればクラスメイトたちが「ほんまに侑なん?」「さっきのが治?」とまじまじと見られた。

「黙ってたらサムやと思う?」

「いやー、喋ってもその髪色と髪型やと治かと思うで」

クラスメイトからの評価は上々で、ほんまになんでバレたのかわからへん。

先生からも出欠とるときに「治は一組やろ」と呆れた顔をされて「先生、俺侑やで」と言えば「なんで髪色変えてんのや紛らわしいねん」と怒られた。

思えば部活でも気づいたのは北さんだけで、他の人はみんな俺がサムやと思っとった。

昼休みにサムのところへ行けば「名字さんのこと見下ろしたから気づいたらしいで」と回答がもらえて、次はもっとサムっぽく近づこうと思った。

「騙して捕まえるんやなくてもっとええ方法あらへんの?」

「それが思いついとったら最初からそうしとる」

「今回ので名字さんの逃走心に火をつけたみたいだから普通にしてたんじゃ捕まらないかもね」

「じゃあどうしたらいいんや!」

「ってか侑は名字さんのこと好きなわけ?」

「はぁ!?なんでそうなんねん!」

「え、違うんか」

「どう見ても好きな女の子に逃げられてる男にしか見えないけど」

「好き!?俺が!?名字さんを!?」

二人から言われた言葉に驚いて椅子から立ち上がると周りからも「好きやと思っとった」「なんや違うんか」とワイワイ言われた。

俺って名字さんのこと好きやったんか…?

「無自覚とかウケる」

「ポンコツなのも大概にせえよ」

「好きって何や…?」

呟いた俺の言葉に二人は顔を見合わせてため息をついた。



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