15

「ねえ、名字さんって治先輩にあげてるの手作り?」

話しかけてきたのは同じクラスの桜井くんで、今まで話したことはなかったはずだ。

「うん、そうだよ。なんで?」

「僕もお菓子作り趣味なんよ!」

「え、そうなん?」

「そうなの〜!名字さんが治先輩に渡してるの見て僕もそういうの作れたらええなと思ったんやけどね、ほら、話したことなかったら今まで躊躇っちゃってて…」

これ、僕が作ったんだよと桜井くんは写真を私に見せてくれた。

「あ、これ駅前の?」

「そうそう、食べて美味しかったから似たようなの作れないかなって思ったんやけど難しくて失敗しちゃったの」

「えー、上手だよ!私も今度作ってみようかな…」

「それなら今度僕の家か名字さんの家で一緒に作らへん?僕もリベンジしたくてさ〜」

「ええの?」

「勿論だよ!だって僕お菓子作りのお友だちほしかったんやもん!名字さんと仲良くなりたいなって思っとったんよ」

共通の趣味とはすごいもので、初めて話したとは思えないくらいポンポンと会話が進んだ。

「それより僕こんなだけどええの?」

「こんなって?」

「ほら、少し女の子っぽいっていうか…」

「別に気にならへんよ!むしろ話しやすくてええと思うけど」

「ほんま?」

「うん」

「実はね、名字さんが治先輩と仲良くしとるのみてええなって思っとったんよ」

「なんで?」

「二人の雰囲気めっちゃええもん!お互いを尊重してるっていうの?ああいうの憧れるわ〜」

「そうかなあ、そうやったらええなあ」

えへへと笑う桜井くんは、多分治先輩のことが好きだったんじゃないかなと思った。

私の視線に気づいた桜井くんは「あ、バレちゃった?でも安心して。僕名字さんと治先輩のことほんまに応援しとるから」と嬉しそうに笑った。

「あ、名字さん今度暇やったら新しくできたケーキ屋さん一緒行かへん?」

「ええよ!あそこやろ?通るたびに気になってたんよね」

「いつ空いてる?」

「んー…ここと…ここかな?」

「あ、じゃあこっちの日の方がええかも」

「楽しみやね!」

その後も話題は尽きることなくて、新作のスイーツとかお菓子のレシピとか色んなことを話した。
桜井くんと話すのはとても楽しくて、辺りが暗くなるまで教室に残った。



back