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名字さんと仲良くなって、一緒に帰る回数が増えた。
いつも「男のくせに」とか「気持ち悪い」とか言われて嘲笑されて、人と仲良くなるのが怖かった。
それでも名字さんの作っているお菓子を見て、どうしても仲良くなりたくて勇気を振り絞って話しかけたら名字さんは普通に話してくれた上に話しやすくていいと笑ってくれた。
初めてできた女友達に舞い上がっていたのが悪かった。
僕も名字さんも異性の感覚がなくて、距離も近かったんだと思う。
気づいたら周りから付き合ってるとこそこそ言われるようになっていて、訂正するにしても直接聞いてくる人はいなかったのでできなかった。
「桜井くん、治先輩に『もうつくらんでええよ』って言われてもうた」
名字さんが泣きそうな顔で僕にそう伝えてきた時に、今までの自分の行動を猛省した。
二人のあの関係性が好きだったのに。
僕が名字さんと仲良くなんてならなければ名字さんにこんな悲しそうな顔をさせることなんてなかったのに。
「ごめん、僕のせいだ…」
つぶやいた言葉はあまりに情けなかったけど、名字さんは「桜井くんのせいとちゃうよ。私は仲良くなれて嬉しかったで?」と笑顔をつくってくれた。
名字さんは笑っていた方が可愛い。
そんな無理矢理作った笑顔なんかじゃなくて、治先輩といる時のあの花が咲いたような優しい笑顔が一番似合うんだ。
僕は大事な友だちのために、治先輩の誤解をときにいかないといけない。
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