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名字さんにもう作らなくていいことを伝えてから、元々違う学年なこともあり名字さんのことを見かけることはなくなった。
お菓子だけで繋がっていたのだなと、離れてからその希薄さに乾いた笑いしかでない。
告白も前みたいにされるようになったし、差し入れは以前よりも増えたと思う。
貰うと食べなければいけないのでお断りしているが、その度に「名字さんのしか食べないんですか?」と聞かれるのは結構キツいのでやめてほしい。
告白もしていなかったのだからフラれたわけではないけれど、それでも両想いだと疑わなかったくらいだからこの失恋はなかなかにダメージが大きかった。
ツムに「告白もせんと失恋ぶってんのむっちゃキショいで」なんて言われたのに、正論すぎて何も言い返せなくて俯いたらさらに「そこは言い返してこんか!」と怒られた。
そんな風に過ごしていたら下駄箱に手紙が入っていて、それには『放課後、資料室でお待ちしています。お話ししたいことがあります』と書いてあった。
また告白かとため息をつきそうになったが、その割には文面がおかしい気がした。
一瞬名字さんが頭をよぎったけれど、今更彼女が俺に話すことなんてないし、一瞬でも期待してしまったことに吐き気がした。
自分から関係を絶っておいて見苦しすぎる。
放課後指定通りに資料室へ向かいドアを開けたら、見覚えのある男子がそこにいた。
「治先輩」
俺の名前を呼んだのは名字さんと一緒にいた男子で、今一番見たくない顔に思わず眉間に皺が寄った。
「あの、行かんといてください。ちゃんと聞いてください。僕、名字さんの彼氏なんかやないです」
喋った感じは男子というより女子。
自分の勘違いが一瞬でわかった。
距離が近いのはお互いが異性の友だちだと思ってないからだ。
「やってもうた…」
頭を抱えて蹲れば、目の前の男子が「誤解解けましたか…?」と心配そうに聞いてきた。
「解けた。解けたけど…どうしろっちゅうんや…」
勘違いでしたごめんで済む話か?
わけもわからず拒否とか絶対泣かせたやん。
「今日も名字さんお菓子作って持ってきてましたよ。まだ帰ってないで教室にいます。僕が言うのも変ですけど、気持ち伝えてあげてください」
「許してくれるんやろか」
「怒ってないですよ。誤解があったのはわかってます」
それでも躊躇う俺に、彼は「今伝えないと誤解は誤解のままです」と告げた。
「せやな、ありがとう」
教えてくれた彼に背を向け、名字さんのいる教室へ走った。
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