07

「へー、名前ちゃんは東京の高校やったんや」

「そうですよ、私が二年の時は春高も出場してます!」

「どこの高校?」

「音駒です」

「あー!俺らの後烏野と戦ったとこか!」

「ご存知ですか?」

お互い同い年ということもあって、なかなかに話が弾んだ。

「そらその時のセッター今“世界のKODZUKEN”としてめっちゃ人気やん。最初見たときびっくりしたわ」

「えへへ、誇らしいですよね!」

話しているうちに、どこか妙なことに気づく。

先輩曰く、おにぎり宮は連日混み合うほどの人気店。
なのに先程から誰一人として暖簾をくぐる人がいない。
店内には私一人だけ。

「あの…私そろそろ帰りますね…?」

急に抱いた違和感は、多分勘違いではない。
そもそも出店していたその夜にお店を開くものなのだろうか。

「まあまあ、明日も休みやし今日は暇なんやろ?もうちょっとお話せえへん?」

「え、でも…」

「昔話に付き合うてや」

笑顔なのに有無を言わさぬ圧があった。

仕方なしに座り直すと、冷蔵庫から常連さんにいただいたというゼリーが出てきた。

「俺らが小学校の頃の話やねん」

そう治さんは話し出して、とても大切なものを懐かしむ顔をした。



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