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結局わざと捕まるのも嫌で、侑くんとの追いかけっこは未だに続いている。
侑くんは私の下駄箱に呼び出しの手紙を入れたり、懲りもせず髪色をアッシュグレーに染めたりとあの手この手で捕まえようとしてくるのだけれど、私の方も慣れてきたもので治くんと侑くんを見間違うことはもうないし、侑くんの筆跡も大体わかるようになった。
正直これ以上やっても侑くんが私のことを捕まえるのは無理だから降参してくれればいいのにと思っている。
少なくとも今のままじゃ何も進展は望めないから。
どうしようか、そんなふうに思っていた時だった。
「侑くんのクラス、文化祭で人探しやるってほんま?」
「そうらしいで。名字さんも探してみたらええんちゃう?」
「ってことは侑くんも探される側になるんやね?」
「いい加減飽きてきたんやろ?」
フッフと笑う治くんは私の気持ちをよくわかっている。
「ツムもネタ切れやしな。いいきっかけになるんやない?」
「折角やからびっくりさせたいけどなあ」
「俺らのクラスお化け屋敷だし、名字さんそういう系の格好して抱き付けば楽しそうじゃない?」
「侑くん怖いのダメなん?」
「前バレー部で肝試しした時はなかなかいい反応してたけど?」
「せやな、あんまり得意ではないやろな」
「えー…そんなのやるしかないやん」
三人で顔を見合わせてニヤリと笑い、作戦について話し合うと俄然文化祭が楽しみになってきた。
侑くんの怖がる顔、早く見れたらええなあ。
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