08

ツムから名前ちゃんを試合会場で見つけたと連絡があった。

最初、夢でもみたんかと思ったけれど顔も名前も間違いなく名前やったと言い切ったツムに、ほんまに名前ちゃんと会ったんやと心臓がギュッと締め付けられた。

『サムの店に行くよう言ったからな』

夜は出店の片付けとかもあるし開けるつもりはなかったのだけれど、名前ちゃんが来るかもしれんと思ったら普段の開店時間に店先を彷徨いてしまった。

来るかもわからないし、来たとしてもいつ来るかわからないのにいつまで店先にいるんだと自分でも呆れる。

急に冷静になって店内へと戻ろうとしたら後ろから可愛らしい声で「開いていますか?」と尋ねられ、振り返れば小さい頃の面影が残った顔が見えた。
ツムが会ったのはこの子やと一瞬で確信した。

そこからはツムから連絡があったことも名前ちゃんのことを知っていることもおくびにも出さず、ただ会話を楽しんだ。

しばらく話していると、店内に誰も来ないこの状況がおかしいことに気づいたらしい。

どこか不安そうな顔で帰りますと告げた名前ちゃんに、どうしても聞いてほしくて圧のある声でお願いした。

仕方なしに座るその様子は、記憶がなくても優しい名前ちゃんのままなんやなと少しだけ寂しくなった。



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