02

2年生に上がってすぐの5月に、先生が気まぐれで席替えをした。

「あ、前の席治くんなんや〜。よろしくね」

にこにこと人のいい笑顔を浮かべて挨拶をしてきたのは名字さんで、1年の時ツムと同じクラスだった子だ。

艶やかな銀髪と切長の目、見る人の目を惹く容姿だったのでよく覚えている。

「こちらこそよろしくな」

「治くんの後ろでラッキー」

「なんで?」

「治くん背大きいから私が隠れるやろ?寝てるのバレなそうやん」

寝るのが大前提で話す名字さんに「授業くらいは起きて聞いたらどうなん」と笑って返したら「治くんも寝とんの知ってるで〜」と脇腹をつつかれた。

「なにすんねん!」

「あ、苦手?今度から寝てたらつついたろうかな〜」

名字さんと話すのは気楽で楽しかった。

見た目は美人なのに、中身はまるで悪戯好きの小学生男子で決して異性を感じさせることはない。

授業中俺が舟を漕いでいれば本当につついてくるし、昼休みに寝ていれば顔に落書きをされることもあった。

でも、何故か不快な感じはなくてそういう時はこちらも遠慮なくやり返した。

お互いの顔を鏡でみて笑うことだってあったし、気づかないで授業を受けて先生に笑われることもあった。

名字さんが後ろの席になってからクラスで過ごすのが楽しくなって、気がつけば名字さんと一緒にいる時間が多くなった。



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