03

席替えをして2週間程経つと、体育祭の準備に追われるようになった。

「治くんは体育祭何でるん?」

「部活対抗リレーと男子選抜リレーと二人三脚、後は全員参加の種目やな。名字さんは?」

「障害物競走と女子選抜リレー」

お互い出る種目はわりと花形のものなのに、顔には面倒くさいとありありと書いてあるのがわかる。

「名字さん足速いんやっけ?」

「それなりにね〜」

「推薦?」

「そ、推薦」

6月の頭にやる体育祭は、まだクラスの人との交流もそこまでない中で種目を選ぶため、必然と普段から目立つ部類の人間が選抜リレーに駆り出される。

「名字さん見た目目立つもんなあ」

「治くんには負けるわあ。なんてたってバレー部の名物双子やろ?」

「俺は目立ちたくなくても片割れが目立つんや」

「ドンマイやな」

別に二人とも運動が嫌いなわけではない。
暑い中外でやる体育祭は種目にでなければ日陰のあるスタンドにいられるけれど、種目にでるとなると日陰の全くないところで待機させられる上その後どの競技でもほぼ全力疾走が確定している。
なるべく出たくないと思うのは仕方ないと思う。

しかしそうは問屋がおろさないらしい。

昼休みに名字さんのところに俺と組んでる女子がお願いにやってきた。

「二人三脚?」

「私そんな足も速くないのにジャンケンで負けてもうて…。名字さん頼むから代わってくれへん?」

「男女のやろ?相手誰なん?」

「俺やで」

「治くんなん?」

「身長も合わへんし、名字さんほんまお願い…!」

頼んできた女子は別に身長も低くはないけれど、確かに俺と組むとなると合わない。
名字さんは女子にしては高い身長で、俺とも仲は良いので他の人にお願いするより確実だろう。

「ええ…治くんイケメンやで!?イケメンと組めるチャンス逃してもええの!?」

「確かに治くんはイケメンやけど、治くんとの二人三脚はプレッシャーすぎて嫌や」

「いや、二人とも俺と組むの嫌がりすぎやろ」

「イケメンと組んだら嫌でも目立つやん。それで自分のせいで下位になったら笑えへんもん」

「それわかってて私に頼むん!?」

「名字さんなら足速いしいけるから大丈夫やって!お願い!」

「仕方ないなあ…」

「ありがとう!!」

心底嬉しそうに笑った彼女とは反対に、名字さんは困った顔で「申し訳ないなあ」と小さく呟いた。



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