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母から話を聞き終えた後、もう一度おにぎり宮へと足を運んだ。
電気は付いていたので扉に手をかけた時、内側からガラリと扉が開いた。
「お客さん、今日は閉店なんですわあ」
私の顔を見てニコリと笑って扉を閉めようとした店主さんの腕を慌てて捕まえた。
「宮選手がいるところ教えてくれませんか」
「ツムが待ってるのは今の名前ちゃんやないのに行くん?」
「行かなきゃいけない気がするんで」
納得してくれたのか店主さんは「こっちやで」と言って、私の手を引いて歩いてくれた。
道中、店主さんは昔の私とした遊びや行った場所、楽しかったことなどを懐かしそうに話してくれたけれど、どれも私の話だとは到底思えなかった。
店主さんの言う通りこのままの私で宮選手に会ったところでどうしようもないのだけれど、今日会わなければこの先もう二度と会えないような気がした。
しばらく歩くと大きな木が生えた丘が見え、店主さんや母の話を聞く限りあの木が私が落ちた木なのだろう。
階段を登り近づくと、宮選手が木の根元に座っているのが見えた。
昔を懐かしむような目をしていたけれど、その目はどこか寂しそうで私の胸はギュッと締め付けられた。
あの顔をさせているのは私なのに。
思い出したくても思い出せないのがもどかしくて、堪らず階段を最後まで駆け上った。
宮選手のところまで後一段。
つるりと滑った足、後ろへと傾く身体。
浮遊感が私を襲った。
目に映ったのは落ちる私に気づき手を伸ばす宮選手と、振り向いた時に見えた焦った顔の店主さん。
同じ光景をずっと前に見たことがある。
『思い出した?』
脳内に女の子の声が聞こえ、失くしたピースがパチリとはまる音がした。
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