01
「おはよ〜ございまぁす」
気の抜けた声とともに教室に入ってきた女子は遅刻したことを何とも思っていないようで「あ、今年も担任センセなの?」と笑った。
「名字〜、始業式早々遅刻すんなって終業式の時に散々言っただろ」
「善処するとは言ったけど遅刻しないとは言ってないじゃん」
「しょうがねえなあ。ほら、あそこの空いてる席がお前のとこだからとっとと座れ」
空いてる席、つまりは俺の隣なわけだけれどそいつの不真面目なその態度に仲良くはなれそうにねぇなと思った。
のんびり歩いて席へと来たそいつは俺の方を一瞥して「これからよろしくね」とにへらと笑った。
放課後、部活に行ったら当然クラス替えの話になり、先程あったことを話せば及川から驚いた声があがった。
「えっ、岩ちゃんあの名字さんと席隣なの?」
「あいつ有名なのか?」
「岩泉知らねぇの?名字さんっていったら毎回テストは学年首位、模試だって全国上位にはいってるうちの学校きっての天才だぞ」
「遅刻は常習、制服の着方とかも緩くて生活態度はあまりよくないけどその成績のよさから先生たちはなにも言えないって話だよね」
あんなヘラヘラしたやつが学年首位だという事実に衝撃が走った。
と、いうかそんなに頭いいならなんで白鳥沢にいかねぇんだ?
「好きな人がいるから追いかけたって理由らしいけど?」
「え、俺声に出したか?」
「岩ちゃんは単純だから顔に出るんだよ」
ムカつくことを言う及川をとりあえず蹴り、名字の印象の悪さを少し改めた方がいいかもしれないと思った。
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