03

ビュッフェは色んなケーキが色とりどりに並んでいて、見てるだけでも幸せになれた。

プレートを食べた後は花巻くんもいつも通りに戻ってくれて、あのケーキが一番美味しかったとか、見た目はこれが可愛かったとか、いっぱいおしゃべりして楽しかった。

最初はどうなるかと思ったけど、とっても楽しかった。
バレー部は忙しいから休みは少ないけどまた来たいね、なんて話もした。

そして週明けの今日、いつもの約束の月曜日である。
朝クラスへ行くと花巻くんのところにバレー部の及川くんがいた。
昼休みとかに来ることはあるものの、朝からいるのは珍しいなと思いつつ自席へと座る。

「ね〜、マッキー!土曜日駅のとこで一緒歩いてた子誰!?すっっごい可愛かったんだけど!!マッキーに彼女いるとか聞いてないよ!?」

聞こえてきた内容に思わず噴き出しそうなる。

「及川マジうるさいから勘弁して。彼女じゃないから、友だちだから」

「彼女じゃないの!?じゃあ紹介してよ!!」

「無理。多分そいつ及川のこと苦手」

「そんなこと言わないでさ〜!バレーしてる及川さん見たら一発で惚れちゃうかもでしょ!?」

「いや、マジお前自分のクラス帰れって」

及川くん、その子は残念ながら今話している花巻くんの後ろにいる私なのだよ…と心の中で呟きながら、そのことを言わないでいてくれる花巻くんに感謝した。

予鈴が鳴り、及川くんが「マッキーのケチ!!!」と言いながら自分のクラスへと帰っていく。
それを見届けた後、花巻くんは私の方へ振り返り「ごめん、絶対言わないから安心して」と小声で謝ってくれた。

及川くんは諦められないらしくその後も休み時間になると花巻くんのところへ来ては絡んでいて、これは今日の放課後も厳しいかなと思い『無理そうだったらまた来週でも大丈夫だよ』とLINEをしておいた。

放課後、LINEに既読もつかないところをみるとまた捕まっているのだろう。
今日は帰るかな、と荷物をまとめたところでピロンとスマホが鳴った。

見てみると花巻くんからで『及川は全力で撒くから先お店行ってて』ときていて、やっぱりまだ及川くんに追いかけられてるんだと少し笑ってしまった。

『私だってわかれば百年の恋も冷めるだろうし、言ってもいいよ』と送れば『絶対言わない』とだけ返ってきた。
律儀だなぁと思いつつ、約束を守ってくれる花巻くんに安心した。
さっきの剣幕で及川くんに絡まれるのは避けられるなら避けたいのである。



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