02

「岩泉くんおはよ〜」

今日の名字は遅刻をすることなく朝から教室にいて、朝練から帰った俺に挨拶をしてきた。

「はよ」

「久々に朝早く起きちゃった。岩泉くんは朝練何時からなの?」

挨拶だけかと思えば、名字はそのまま俺の方を向いて机にだらしなく突っ伏しながら話を続けた。

「7時からだな」

「えー、大変だねえ。朝はいつも及川くんと来てるの?」

「まあ、部活も同じだしな」

「じゃあさ、明日から私も一緒行ってもいい?」

ニコニコと笑いながら聞く名字は何を考えているのか全く読めない。

「なんで?」

「岩泉くんと行けるなら朝頑張れるかなあって」

「朝練の時間に来たって仕方ねェだろ」

特段断る理由はなかったけれど、朝から名字と登校するのは気が進まなかったために無理矢理話を切り上げた。

でも名字は何故か休み時間毎に俺へと話しかけてきて、その度に朝一緒に行ってもいいかと聞いてきた。

「そんな及川と一緒に行きてェの?」

どいつもこいつも俺のことをあいつとの橋渡しに使おうとする。
岩泉くんと、なんて言うけれど大概そういう女子の視線の先にいるのは及川だ。

「え?及川くん?いや、及川くんはどちらかというといない方がいい」

ところが名字はいつも軽い喋り方をするのに、この時ばかりはキッパリとそう言い切った。

「及川目当てじゃねェの?」

「私の目当ては岩泉くんだよ」

何を当たり前のことを聞くんだろうかという顔でサラリと返され、思わず変な声が出そうになった。

「高校最後の学年でやっと同じクラスになれたから、積極的にアピールをしようかな〜と」

だからよろしくね?と笑う名字に、頭の良いやつの考えてることはわかんねぇと唸ることしかできなかった。



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