03

結局名字のしつこさに俺が折れて待ち合わせの時刻を教えると、翌朝名字は時間ピッタリに現れた。

「朝から岩泉くんと一緒に行けるなんて嬉しいな〜」

「エッ、岩ちゃんなんで名字さんここにいんの!?」

「なんか懐かれた」

「つれない岩泉くんも好きだけどさ〜」

ぶーたれた顔で文句を言う名字は、及川のことを押しのけて俺の腕へと絡んできた。

「ちょっと名字さん、それ胸あたってるでしょ!」

「及川くんはデリカシーがないね。わざとだよわざと!岩泉くんどう?柔らかい?」

とんでもないことを言われ、嫌でも腕に触れた柔らかい感触を意識してしまい顔に熱が集まるのを感じた。

「ばっ、おま!嫁入り前の女がはしたねェことすんな!」

「照れてる?照れてるの?」

「岩ちゃんずるい!代わってよ!」

「あ、及川くんは間に合ってます」

「名字さん冷たい!優しくして!?」

朝からうるさいのが二人に増えて、右からも左からも聞こえる声に学校に着く頃には疲れ果てていた。

しかも面倒くさいことに及川が花巻たちに余すところなく話しやがって、朝から花巻に名字の胸の柔らかさについて延々と聞かれたのはマジで参った。

極め付けは松川の「名字さんて意外と大きいよね」という一言で、先程押し付けられた感触がありありと甦り赤くなると名字に「岩泉くんやらしーんだ」と鬼の首を取ったかのような反応をされた。



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