03
「名字さんはなんでツムなん?」
治くんからそう質問されたのは、私がフられてから2週間が経過した時だった。
「迷惑かけてすまんなあ」
「それは別にええんやけど、あいつマジで人でなしやん。同じ顔なら俺のがええと思うんやけど」
どこまで真面目に聞いてきているのかわからずこたえに窮していたら「すまん、意地悪しとるわけやないんや」と困った顔をさせてしまった。
「好きなものに一直線で真剣な顔でバレーやっとるとこが好きなんかな?確かに性格は治くんのがええかもしれんけどな」
「ほんまツムには勿体ないわ」
「いや、私むっちゃ嫌われとるからな?」
特に不快なことをした記憶もないのにあそこまで嫌われるのもなかなかないと思う。
治くんやないけれど、ほんまなんで侑くんなんやろ。
もっと他の人のことを好きになってたらよかったのかもしれない。
「ツムはギャルにいい思い出ないからな」
「え、私ギャルとちゃうやろ…」
「いや、どうみてもギャルやろ」
「どこがやねん」
「見た目と連んでる友だち」
確かに、生活態度の悪さは否定できない。
制服の着方や化粧の濃さで生活指導の先生に追いかけられるのは日常茶飯事だし一緒にいる友だちも目立つ部類の子たちではある。
「…いや、中身は真面目やし」
「それは否定せんけどな」
と、いうか治くんには言われたくない気もする。
侑くんに比べればマシそうに見えるけれど制服の着方は治くんの方がだらしないし、授業態度だってよくないのを知っている。
そんなことを考えていたのが顔に出たのか「俺はツムがいるから総じてマシに見えるからええんや」とニヤリと笑われた。
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