05

どの部活も活動が中止になるテスト前、担任がとんでもないことを言い出した。

「部活やってるやつ、特に運動部。赤点を一つでも取ったら夏休みは補習になるから部活出られないと思えよ」

高二になるまではギリギリのもあったが赤点とは無縁だったのに、高三になって唯一苦手とも言える教科ができた。

それが数V。

正直受験にも使わねぇし単位を落としたところで卒業はできるからいいだろと甘く見ていた。

「試合にでられないのはまずいねえ」

担任の言葉を聞いて真っ青になる俺を横目に、名字はくすくすと楽しそうに笑う。

「岩泉くんがどうしてもって言うなら、教えるのもやぶさかじゃないけどなぁ〜?」

名字に教えを請うか、自力で頑張るか。

前者は赤点は免れるだろう。
なんていったって名字は学年首位、教えてもらうならまず間違いない人物だ。
後者は上手くいってギリギリ赤点回避、高確率で赤点。

天秤は当然前者に傾いた。

「俺に数Vを教えてくれっ…」

人にお願いするのにこんなに悔しい思いをしたのは及川以来かもしれない。

「数Vと言わず全教科みっちり教えてあげるよ〜」

ニヤニヤと笑う名字に、背筋に冷たいものが走るのを感じた。

頼む、普通に教えてくれるだけでいいんだ。



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