ルドベキア

※オフィスパロ


うちに営業に来る宮さんはものすごく格好いい。

高い背、端正な顔立ち、スポーツでもやっているのか程よく筋肉のついた身体付き。

営業なのに金色に染められた髪の毛も、普通は印象が悪くなるはずなのに持ち前のコミュニケーション能力からそれすらも許されてしまう。

彼が来れば女子社員はもれなく全員色めき立つし、あわよくばと連絡先を聞こうとする人たちがいるのも知っている。

でも宮さんは「個人情報は教えられへんな」と笑って躱していて、誰かと連絡先を交換したという話は聞いたことがない。

今日も昼過ぎに宮さんがうちに来ていて、会う人会う人に絡まれているのを見た。

受付の私が宮さんと関わるのは会社に入る時の一瞬だけ。
一応会社の顔としてここにいる以上他の人とみたいに騒いだりはしないようにしている。

それでも、ど真ん中ストライクのあの顔付きと色気のある声は近くで喋られるだけで私の心臓を鷲掴みにする。

一目惚れなんてこの歳になってするとは思わなかった。
しかも他社の営業さんに。

もう少し手の届く範囲の人を好きになりたかったなぁとため息でもつきたくなった時、宮さんがエレベーターから降りてくるのが見えた。

あー、今日も格好いいな。

平生を装いつつチラリと横目で宮さんを見たら、課長と話しているはずの宮さんと目が合った。

一瞬、本当に一瞬だけだけれど、こちらを見て軽くウィンクをし手を下の方で振った宮さんに心臓が飛び跳ねた。

その後何事もなかったように課長と話して、エントランスまで歩いてきた宮さんはもう私の方なんて見もしなかったけれど、帰り際に受付に寄ってくれて「みんなには内緒やで」とこっそり渡された紙にLINEのIDが書いてあったのは期待してもいいってことなんだろうか。


花言葉:あなたを見つめる



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