09
「離れたら忘れてしまうようにできとるんやから、深く関わったらいけないよ」
小さい頃からそう教えられていたし、人とは寿命が違うから関わったら関わった分だけ傷つくのは自分たちの方だとわかっていた。
いつからだっただろう。
治くんのことを好いてしまって、もう少しだけと自分に言い聞かせ関わりを持つようにしたのは。
私を見る治くんの目が愛しさに溢れていたのもわかっていたのに。
それでも好きという気持ちは止まらなくて、気づいたらもう引き返せなくなっていた。
文化祭の前日に治くんにキスをされて幸せなのにいずれ忘れられてしまうことを思うと辛くて、もう関わっちゃダメなんだと嫌でもわからされた。
「好いてしまったんやねえ」
仲間には好きという気持ちは理性でどうにかなるものではないからね、と慰められた。
きっとみんな一回は人のことを好いて、そして忘れられて悲しい思いをしたことがあるんだ。
だから口を揃えて「深く関わってはいけない」と言うんだ。
今更気づいても仕方ないのに。
文化祭の日、知らないフリをして誤魔化そうとした。
日常でもあまり関わらないようにすれば治くんの気持ちも薄れるだろうから。
でも治くんは私の気持ちがまだ治くんに向いているのを見逃してはくれなかった。
好きだと伝えられたのに、いずれ忘れられる存在の私には治くんの気持ちにこたえる資格なんて何もないんだ。
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