04

翌日、昨日見た制服がどこの学校だったのか分からないまま試合会場へと足を運んだ。

自分でもわかるくらいには落ち着けなくて、大耳に「今日なんかあるんか?」と聞かれてしまった。

「人探しやな」

「へぇ…どこの学校なん?」

「セーラー服にセーター着とった…」

「…女子か」

二人して黙ってしまい、これ以上何を言えばいいのか考えていたら少し遠いところにその制服の子が何人か連れ立って歩いているのが見えた。

「アレや」

見ず知らずの他人に声をかけるなんて自分でも珍しいことをしたと思う。
でも、今日ここで見つけられなければもう会えない可能性の方が高い。

「すみません、その…3年生に名字って女の子おったりしないですか」

女の子たちは最初声をかけられて訝しげな顔をしたけれど、探している人がいるのだと話せば俺の話を真剣に聞いてくれた。

「名字?聞いたことないですけど…下の名前わかりますか?」

「名前って言うんやけど」

「名前?」

「あ、名前先輩のことかな?」

「でも名字違くない?」

「先輩、親が小さい時に離婚したって言ってた気がするからそれでじゃない?」

「…今どこにおるかわかる?」

こっちです、と案内してくれた女の子たちに連れられて行ったところは奇しくも烏野が今まさに戦おうとしているコートだった。

「名前先輩」

後輩の女の子に呼ばれて振り向いた顔に、息がとまった。

見間違いなんかやなかった。

「信介くん…?」

名前の口から出た俺の名前に返事をすると、名前は静かに涙を流した。

案内してくれた子も俺もギョッとして何も言えずにいたら「あ、ごめんね。びっくりしちゃって…」と慌ててハンカチで涙を拭い、俺の方へと歩いてきた。

「もうすぐ試合始まっちゃうから、また後で話せる?」

「おん」

「連絡先教えて?終わったら連絡する」

当たり前なのだけれど、昔よりもしっかりとした口調でそう言った名前はあの時の不安定さは全くなかった。

離婚したと言っていたし、環境が変わったおかげなのかもしれない。

「じゃ、また後でね」

お互いに手を振り合い分かれると、名前を見つけた実感が湧いてきて、夢のような出来事に頭がクラクラした。

久々の再会は何を話せばいいのだろうか。



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