06
「名字さんは黒髪が似合うと思う」
「好きでこの髪色にしてんのや」
「パーマよりストレートなんてどや?」
「巻いてる方が好きなんや」
「シャツのボタン第二まではしめたほうがええんちゃうかな」
「苦しいからいやや」
「スカート短すぎるんちゃう?」
「短い方がかわええやろ!」
この間から治くんが口うるさいオカンみたいになっているのは多分気のせいやないと思う。
何を考えているのかわからへんけどほんまにうるさい。
なんなら生活指導の先生よりもうるさい。
「何が言いたいんや!私は好きでこの格好しとるんやからとやかく言わんでもらってもええ!?」
毎日顔を合わせるたびに小言を言われる私の身にもなってほしい。
いい加減堪忍袋の緒も切れるってもんだ。
「名字さんはまだツムのこと好きなんやろ?それやったらまず見た目から変えたほうがいいと思うんや」
真面目くさった顔をしてそう言ってのける治くんにはため息しか出ない。
「見た目でそんな態度変えられたら人間不信になるわ」
「先入観があるからまずそこを壊すところからなんや!1週間でええから清楚系目指して見てくれんか」
「…1週間だけやで」
「ほんまか!?」
「治くんがなんや知らんけど頑張ってくれてるのは伝わるからな」
手始めに美容院に予約でもするかとスマホを手にとれば「備考に黒髪清楚系でお願いしますって書くんやで」と口を出された。
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