05

「試合負けちゃったよ〜」

やはり自校が負けるのは悔しいのか名前は会って早々凹んだ声でそう言った。

「信介くんもバレーやってるんだね。もう少し早く会えてたら昨日の試合も見れたのになあ」

「負けてもうたけどな」

「でも活躍したんでしょ?見たかったな」

「俺は活躍なんてしとらんよ。すごいのは他の奴らやねん」

「そういうとこ、変わらないね」

久々に会ったはずなのに、会えなかった時間が嘘のようにすらすらと話ができる。

「私ね、高校卒業したら大阪の大学受けるつもりなの。ちゃんとA判もでてるから、このまま頑張れば行けると思う」

「なんで大阪なん?」

「兵庫の大学も考えたんだけど、信介くんのとこから遠いでしょ?」

「あんな小さい頃の話なのに俺ん家がどこにあるか覚えとったん?」

「だって会いに行こうってずっと思ってたから」

小さい頃、たった2週間いただけのはずなのに名前が俺と同じように大切な思い出として感じてくれていたことが嬉しかった。

「あ、迷惑だったりする?」

「そんなことあらへんよ」

「そ?ならよかった。私ね、あの夏からずっと信介くんのこと忘れられなかったから…」

「それは俺もやな。昨日名前のこと見かけた時、心臓止まるかと思ったわ」

「ふふ、見つけてくれてありがと」

二人の間に静寂が流れる。
お互い、多分同じ言葉を思っている。

「信介くん、あのね…」

「名前、大学こっちくるの待っとるから」

「…うん、受験がんばるね」

「またその時に」

「そうだね、その時に」

どちらからともなく小指を差し出し、言葉にはしなかったけれど結ばれた約束はきっと来年の4月に叶うはず。

手を振り去っていった名前に、もう離さないと心に誓い俺もチーム名の元へと戻っていった。



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