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梅雨の時期になると髪ははねてぐちゃぐちゃになるし、靴下は履いてる意味をなさないくらいに濡れるし、顔もべたべたして折角したお化粧も崩れるしいいことなんかなにもない。
今朝晴れていたので傘を持たずに出勤したら、昼ごろからドン曇りになって夕方にはこれでもかっていうくらいの大雨になった。
そういう日に限って定時で帰れず残業になり、夕飯を作る気力もない。
会社から駅までの道を急いで走りながらもうどこでもいいから雨宿りさせてくれ!という思いで近くにあったご飯屋さんの暖簾をくぐった。
「いらっしゃいませー」
聞こえてきた少し低めの声に顔をあげ、濡れた髪をタオルで拭いて店内を見渡すと鮭、梅、ピリ辛キュウリなどと書かれたお品書きが見えた。
どうやらここはおにぎり屋さんらしい。
カウンターへと案内されメニューをみるが、種類が多くてどれにするか迷う。
難しい顔をしていたのだろう、店員さんがよってきて「おすすめは梅やな〜」なんて言ってくれた。
梅だけでは足りないのでネギトロも頼めば「豚汁もあるで」と勧められたのでそちらもお願いすることにした。
しばらく待つと「お待ち〜」と言ってホッカホカのおにぎりと豚汁が差し出された。
思っていたよりもずっと美味しそうなおにぎりに思わずゴクリと喉がなった。
まずはネギトロから…と上からかぶりつけばホカホカのご飯が口の中で解けてなんとも言えない幸せ感に包まれる。
これは豚汁も期待できるなと一口食べれば昔おばあちゃんの家で食べた懐かしの味が広がった。
あまりの美味しさに夢中になって食べたらあっという間にお皿が空になってしまい、追加を頼むかどうか考える。
頼むなら何にしようと顔をあげれば、横にテイクアウトできますの文字。
悩みに悩んで、今日はこれでおしまいにして明日の朝ご飯にすることにした。
「すみません、鮭とピリ辛キュウリと梅をお持ち帰りでお願いします」
そう頼めば先程の店員さんが笑って「まいど〜」と言ってくれた。
お会計をすませ、品物を受け取りお店を出ようとしたときに「お姉さん傘忘れてもうたんやろ?そこのビニ傘店のやから持ってってええよ」と声をかけてくれ、外の土砂降りを思い出しありがたくお借りすることにした。
外にでると相変わらずの雨。
しかし、あんなに憂鬱だった雨も明日の朝ごはんを考えれば気にならないなんて、ご飯の力は偉大だ。
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