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修学旅行は、心配していたのは杞憂だったみたいで名字さんと普通に話せた。
この間まで避けられていたのが嘘のようで、それこそ避けられていたこと自体が勘違いだってのではないかと疑うほどだ。
名字さんの瞳は前みたいに不安に揺れることはなくなり、何かを決意したような真っ直ぐな瞳をするようになった。
何を決心したのかはわからない。
それでも俺と話してくれるようになったのは確実に嬉しい変化だったし、それについて深く聞くことはしなかった。
そして修学旅行の二日目、名字さんは初めて行くという某夢の国に側から見ていてもわかるくらいに浮かれていた。
「カチューシャにするかハロウィン限定のにするか迷う…」
入り口入ってすぐのワゴンショップで立ち止まると、名字さんは頭に色々付けてみては同じグループの佐伯さんとはしゃいでいる。
「治くんはどれがええと思う?」
正直どれも可愛くて捨てがたいけれど、折角来たのだからここはお揃いのカチューシャをつけてみたい。
「俺これにするから名字さんこっちにしたらええんちゃう?」
もふもふのくま耳をとり頭につければ、名字さんは「ええの?」と嬉しそうに笑ってくれた。
勿論俺だけつけてもアレなので角名も巻き添いや。
「俺はそのもふもふはちょっと…」
「角名くんはこっちのが似合いそやな?」
角名に渡したのは青色の帽子を被った黒のオーソドックスな耳で、黒髪の角名にはそっちの方が確かに似合う。
「ほんなら私がリボンの方にしたら違和感あらへんな」
佐伯さんは角名が断りにくいように名字さんへの援護射撃をサラッとして、角名のカチューシャの購入が決まった。
「ほな、まずは一枚」
自撮り棒を伸ばしてみんなで撮ろうとしたら、名字さんは一瞬寂しそうな顔をした気がした。
「その写真私に後で送っといて」
「当たり前やん〜!ってか今送っとくわ!」
4人のグループLINEにすぐさま送られた写真は、本当に楽しそうで先程の顔は見間違いだったのかもしれない。
「さ、カチューシャも決まったことやしアトラクションに乗りにいかな勿体ないな!」
マップを開いてどれに乗るか話しながら歩く時、角名たちが気を遣ってくれて自然と俺と名字さんが隣になるようにしてくれた。
お揃いのカチューシャをして名字さんが持つ園内マップを覗くと、すぐにでも触れられる距離がとてつもなくもどかしく感じた。
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