10
治くんに言われてそれからしばらくは治くんと行動することになった。
朝の待ち合わせに始まり、休み時間とお昼ご飯。
最初はどうも慣れなかったけれど一週間も続ければ治くんと一緒にいるのが当たり前になった。
周りからは「名字さんと治くん付き合うてるの?」なんて聞かれたけれど、治くんは笑うだけで否定もしなかったので私もそれに倣っている。
「治くん好きな子に誤解されてまうんやないの?」
「俺好きな子なんておらんからええねん」
「ならええけど…これほんまに侑くんに効いてるん?」
「効果はバツグンやで。この間からずっと俺のこと見ては何か言いたそうな顔しとるもん」
治くんからしたら何かしらの効果はあるらしいけれど、当事者の私は全くと言っていいほどイメチェン前と変わらないでいる。
強いて言うなら私だと認識されていないみたいで睨まれることがなくなったくらいだ。
後知らない人から告白をされることが増えたし、優しくされることも多くなった気がする。
人って見た目でここまで態度が変わるのかと少し人間不信になりかけた。
「でももう約束の一週間やで?」
「せやなぁ…もう少し俺になんか聞いてくるかと思ったんやけど…」
「なんかいい手はないん?」
「こっちからアクションせな進展はなさそうやな〜」
「ええ…話が違うやん…」
まあ、治くんは私に付き合ってくれてるわけだから私が何か言える立場にはないんだけれど。
そんなことを考えながら歩いていたら、侑くんもぼんやりしていたのか私にぶつかってきた。
私と侑くんの体格差からぶつかられた私は思いっきり転け、モロに尻餅をつくと床の硬さがダイレクトにお尻に響く。
「痛っ…」
「す、すまん!考え事しとった…!」
ぶつかった張本人の侑くんは真っ青になって私に手を差し伸べてくれたけれど、やっぱりこれは私のことわかってないんだな。
今まで侑くんにこんな風に優しくされた試しなんかないし。
見た目が変わったくらいでこんなに態度が変わるなんて酷すぎる。
治くんには先入観をなくすところからだって言われていたけれどこれはあんまりじゃないか。
ジワリと目に浮かんだ涙は最も簡単に地面へと落ちた。
「すまん!!足捻ったりしたか?」
泣いた私にびっくりして覗き込んでくるけれど、一向に私だと気づかない侑くんにイライラが募る。
今までの私が何をしたって言うんだ。
「見た目が変わったくらいで態度変えるなんて最低や!!!」
気づけば言葉が口から溢れてて、差し出された手を振り払った。
侑くんの向こうに治くんが焦っているのが見えて、協力してくれたのにこんなことをしてしまった自分に嫌気がさす。
好きになってもらえれば嬉しいと思ったけど、こんなの間違ってた。
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