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高校三年生になって治くんとはクラスが分かれた。

修学旅行で想いが通じ合ったのが嘘かのように治くんの記憶から“私”がいなくなっていく。

はじめは会いに来てくれていた治くんも、今ではそれすらないし廊下であった時も目線すら合わないのできっと仲良かったことも忘れてしまったのだろう。

好きな人に忘れられることがこんなにも辛いなんて出来れば知りたくもなかった。

私だけが覚えていて、私だけが好きでいる。

覚悟を決めたつもりでも傷つくものは傷つくのだ。
でもお母さんが言っていた通り、治くんが忘れても私が覚えてればいいだけ。
想い出を作るのは悪いことじゃないから。

高三の卒業式、多分これが私と治くんが話す最後の機会。

特に何か話すことはないけれど、治くんと過ごした思い出にボタンだけはもらおうと思う。
そして家にある宝石箱にいれて、ずっと大切にするんだ。

私の中で稲荷崎高校で過ごした三年間はかけがえのないもので、キラキラと輝く宝石みたいに大事な思い出なのだから。



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