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最近サムが一緒にいる女の子のことが気になるけれど、これで「彼女や」なんて言われた日にはショックがデカすぎるので聞くに聞けないでいる。

俺もあんな可愛い子と知り合いになりたかった、そんなことを思いながらぼんやりと廊下を歩いていたら視界に小さい影が入り、気づいた時にはぶつかっていた。

その衝撃から後ろに倒れた子は余程痛かったのか目に涙を浮かべて俯いてしまって、慌てて顔を覗き込んだら先程考えていた女の子で驚いた。

なかなか立たないその子に足でも捻ったのかと思い手を差し伸べたら、差し出した手はパシリと叩き落とされ大きな瞳で睨みつけられた。

「見た目が変わったくらいで態度変えるなんて最低や!!!」

なんでそんな風に言われたのかもわからず唖然としていたらサムの焦った声が後ろから響いた。

「名字さん!!」

サムの読んだ名前に、自分のやったことがどれだけ酷いものだったかが一瞬でわかった。

見た目で判断されて嫌な思いをした筈なのに、それと同じことを他人にして傷つけるなんて。

「ツムが追いかけんでどうするんや!」

そう言うけれど、傷つけた張本人の俺に名字さんを追いかけさせてどうしろっていうんや。

「自分がやったことを悪いと思うならまず謝るのが先やろ!話はそれからや!」

サムは俺の背中を勢いよく蹴ると、まだ動こうとしない俺に対し「お前が行かないんなら俺がもらってまうけどええんやな!?」と胸ぐらを掴み叫んだ。

「ずっと前から好きやったのはお前の方やろ!素直にならんか!!」

「…すまん」

「早よいかな今度こそ手に入らんぞ」

サムの言う通りや。
急いで名字さんがいなくなった方へと駆ける。

今男気見せんでどうする。



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