07
名字が教えてくれたおかげもあってか、期末は今までにないくらいの順位になった。
正直数Vの赤点さえ免れればいいと思っていたのにこの点数は驚きだ。
進路の先生にも「この点数ならもう一つ上の大学狙えるんじゃないか?」と言われたし、親に成績表を見せたら今までとの順位の差に二度見された。
「名字さん効果すごっ」
「これは俺らも教えてもらうべきだったんじゃねーの」
「今からでも遅くないから勉強教えてもらう?」
及川たちがそう口々にそう言うのも無理はない。
俺だってこの結果は信じられないんだから。
名字との勉強会の話をしていたら、及川が急に思い出したかのように口にした。
「ってかさ、岩ちゃん勉強会してから名字さんとの距離遠くない?」
たまにコイツは核心をついてくるから侮れない。
「なんかあったの?」
「あんだけ好きアピールされてて今更何かあんのかよ」
「…もしかして、本気にしてなかったとか?」
笑いながら言われた松川の言葉に詰まると、3人揃って顔を青くして「マジか…」と呟かれた。
「そっか〜、意識しちゃったのか〜」
「岩泉はそれでどうなの?」
「名字さん可愛いし惚れちゃった?」
「うるせェ!」
真っ赤になった顔で怒っても余計揶揄われるだけなのは目に見えていたけれど、好きとか惚れたとかそういうのを言葉にするよりは幾分かマシだった。
「早いとこ告白してあげなよ。高校生活も残り僅かだよ」
及川の言葉はもっともで、俺らに残された時間は後8ヶ月。
しかも夏休みや冬休み、受験期間を含めれば後3、4ヶ月しかない。
卒業後も会える保証なんてないし、今この関係も名字の努力で成り立っているだけなのだから。
back