04
案内された部屋はこぢんまりとしていたけれど、玄関の印象通りのお洒落な雰囲気やった。
「外観にくらべて綺麗やな」
「去年内装リニューアルしたって書いてあったからな。お風呂も温泉引いてるらしいし楽しみやなあ!」
「夕食まで時間あるし入ってきたらええんちゃう?」
「そうしよかな!侑と治はどうするん?」
「近所に有名なスイーツのとこあるらしいからそこ行ってくる」
「俺はそこら辺散歩してくるわ」
「二人とも6時前には帰ってくるんやで」
そうは言ったものの、小遣いもあまり残っていない現状、知らない土地でウロウロしたところでなにかできることもない。
バレーボールも持ってきたけれどこの暑い最中に外でやったら倒れるのは目に見えている。
「やることあらへんなぁ…」
「それなら、私と一緒遊び行きませんか?」
誰に呟いたわけでもない言葉やったのに、後ろから声をかけられ振り向いたらそこには名前ちゃんが先程とは異なる服装でおった。
「それ、バレーボールですよね?この後地元の子どもたちのバレーに混ぜてもらうんで、よければどうですか?」
「ええの!?」
「私も夏休みになると混ぜてもらうんです。教える人足りてないから経験者が行くと喜ばれますよ!」
まさか旅先に来てまでも体育館でバレーができるとは。
一応サムにも『バレーしてくるわ』と連絡を入れて、部屋からシューズを取り名前ちゃんの後ろをついていく。
「お手伝い、ええの?」
「おばさんも私に夏休み満喫してほしいみたいで、手伝うのはお客様がいらっしゃる時間と夕飯の配膳だけなんです。今日はもう皆さんチェックインされたから夕飯まで自由時間なんですよ〜」
「名前ちゃんもバレーやっとるん?」
「部活としてはやってないです!中学の時に怪我しちゃって辞めちゃったんですよね〜」
「どこ怪我したん?」
「膝ですよ〜。でもバレーは好きだから、夏休みだけここのバレーチームに混ぜてもらったりしてまだ続けてます。ふふ、質問ばっかですね?」
「あ、すまん…」
「いいんですよ!まさかうちに稲荷崎の宮ツインズが泊まりに来てくれるなんて思わなくて、私ちょっと嬉しいんです」
くるりと俺の方を振り返り、本当に嬉しそうにら笑う名前ちゃんを見てこの子はバレーを愛しているんやと漠然と思った。
「俺らのこと知っとるん?」
「やだ、全国常連の強豪校ですよ?知らないわけないじゃないですか!」
「ほんまバレーボール好きなんやな」
「大好きです!」
ニカッと笑ったその顔から目が離せない。
なんて眩しいんやろう。
「なので侑さんのバレー間近で見られるなんて夢みたいです。私、一生の運ここで使っちゃったのかも」
「それなら、俺もここで名前ちゃんと会ったことで運使ってもうたかもな」
少しくさかったかもしれないけれど、このキラキラと輝く目で俺を見るこの子と出会えたことには感謝しかない。
一目惚れなんて自分の身に起きるまではないと思っていたけれど、会った瞬間に走った衝撃はきっとこれからも忘れられないと思う。
「あ、着きましたよ!」
「楽しみやなあ!」
サムのことも誘ったけれど、今日ばかりは来ないでくれと願わずにはいられなかった。
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