05
体育館へ入ると高校生の俺が珍しいのかちびっ子に囲まれて次から次へと質問をされた。
「名前ちゃんの彼氏?」
「違うよ!うちのお客様!」
「お兄ちゃんバレーやってるの?」
「全国大会常連高のレギュラーなんだよ!すごいんだから!!」
名前ちゃんはその一つ一つに丁寧にこたえ、ちびっ子たちと楽しそうに会話をしているのを見るとかなり馴染んでいるのが窺える。
「ほらほら、侑さん困ってるじゃない!やることあるでしょ!」
さっきまで俺に群がってたちびっ子たちも「はーい」といい返事をして各々準備に取り掛かり始めた。
「監督とかおらんの?」
「もうすぐ来ると思いますよ。みんな夏休みだから本来の時間より早く来るんです」
「俺、ちびっ子に教えたりとかりできひんけど…」
「監督にさっき連絡しといたら、侑さんのセットで子どもたちに打たせてあげられたら喜ぶと思うって言ってました」
端の方で丁寧に準備運動をする名前ちゃんは、自分のことのように嬉しそうに話す。
そんな名前ちゃんと話していたら、子どもの頃に参加したバレーボール教室で「打たしたる」と言い切ったおっちゃんを見て、セッターになりたいと強く思ったことを思い出した。
今日俺が打たせてあげることでその子が未来のバレーボール選手になったらどれほど嬉しいだろう。
「俺が打たしたんねん」
呟いた言葉に一瞬キョトンとした名前ちゃんやったけど「セッター、格好いいですね!」と笑って返してくれ、過去の自分と重なるその姿に胸が熱くなった。
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