07
「さっ、こーい!」
名前ちゃんの声が体育館に響く。
少し緊張した面持ちで、構えているのが窺える。
他のちびっ子たちとは違い、ボールを投げるのではなく10本の指でネットへとボールをあげると名前ちゃんは背中に羽が生えたかのように高く跳んだ。
体育館の床を蹴る音もしっかりとしていて、空中に留まる時間も長い。
ボールを手のひらに当て床へ叩きつけると、ボールはサイドラインギリギリのところへ決まった。
「ナイスキー!」
綺麗に床に着地した名前ちゃんは、そのまま列に戻ることなく体育館の扉へと走っていき、その横顔はほんの少し泣きそうやった。
「代わるよ」
「…お願いします」
監督にボールを預け名前ちゃんを追いかけると、顔をぐちゃぐちゃにして泣いている名前ちゃんが体育館の階段のところへ蹲るように座っていた。
「侑さん、打てた…」
「思い切り跳んでも膝、痛くなかった」
「バレー、続けられるかな」
途切れ途切れに話す言葉に「できる」と一言返せば「ありがとう…」と小さい声でお礼が聞こえた。
帰り道、名前ちゃんは中学の時に膝を壊して、それ以来跳ぶのが怖くなったことを俺に話してくれた。
親にもバレーを続けることを反対されて、周りに味方は誰もいなかったらしい。
「でも、やっぱり諦められない」
前を向いてキッパリとそう言い切った名前ちゃんは、きっとバレーをこれからも続けるだろう。
「侑さん、ありがとうございます!」
夕日に輝く笑顔を見て、この子なら大丈夫だと確信できた。
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