01
私と双子は小さい頃からの幼馴染で仲が良かった。
中学に入り、双子がバレーで頭角をあらわし、端正な顔立ちも相まってモテ始めたと同時に私はいじめられるようになった。
決して表に出るようなことはされない。
放課後とか昼休みに呼び出されたり、すれ違いざまに悪口を言われたり。
本当に地味なことなのだけれど、それが何回も何回も続くと結構しんどい。
一時期双子と離れればいいのでは、と思って離れたら逆にストッパーがいなくなって悪化した。
多分侑が怖いからバレるようにやるとヤバいのはわかっていたのだろう。
いたらいたで嫉妬されていじめられ、いなくなったらいなくなったでよりひどくなるなんてどうしようもなさすぎる。
高校に入り、嫌がらせも落ち着くかと思いきや呼び出しの回数は格段に増えた。
今まで黒髪だった彼らが金と銀に髪を染め、中学より伸びた身長と逞しくなった体つきが余計ファンを増やしたらしい。
そして今日もまた昼休みに私は呼び出された。
「幼馴染だからって調子のんなや」
「侑くんたちが迷惑なのわからへんの!?」
「彼らのバレーの邪魔せんでよ!」
ボキャブラリーがないのか?と言いたくなるような何度も聞いた言葉。
ため息をつきたくなるが、ここでつくと火に油を注ぐので何も言わずに我慢する。
手を振り上げられ、ああまた叩かれるのか、痛いのは嫌だなあと目を瞑ったがいつまで経っても痛みはこなかった。
不思議に思い目を開けると、そこには先程の女の子たちとは別に、銀髪で毛先だけ黒い髪の男の人がいた。
あれ、この人どこかでみたことあるなと思ったが誰だったか思い出せない。
「自分らこの子のこといじめとるん?」
そう彼は彼女たちに聞いた。
当然こたえるわけもなく、何も言わないでいる彼女たちに再度声をかけた。
「なあ、いじめとるん?って聞いとるんやけど?」
流石に何も言わないことはできなかったのか彼女たちは「そんなことない」と目も合わせずに小さい声でこたえた。
「じゃあなにしとったん?こんなか弱そうな子相手に大人数で。自分ら双子のファンやんな?体育館でみたことあるで」
そう淡々と言う姿は凛としていて、決して大きい声をだしているわけでもないのにピリピリとした空気が流れる。
「双子に好かれたいんやったら双子にアピールせなアカンやろ。この子のこといじめてなんかええことでもあるんか。嫉妬は醜いで」
ものすごいストレートにど正論を繰り出した彼は私に「怪我ないか?」と聞いてくれた。
頷けば、後ろの彼女たちに「もう用がないんやったらこの子はもらってくで」と告げ、私の手を引いた。
手を繋いだままどこへ行くのかと思えば保健室で、彼は「失礼します」と声をかけドアを開けた。
保健室の先生に「この子具合悪いみたいなんで少し休ませたってください」と言い、私には「このまま教室帰るんは辛いやろ、休んでいき」と言ってくれた。
保健室の先生に「気が済むまで休んでいいからね。大丈夫になったら声をかけて」と言われ、先程向けられた敵意に疲れていた私はその言葉に甘えさせてもらうことにした。
ベッドに横になり寝ようとするが、思い出すのは先程助けてくれた人。
多分、先輩。
あんな風にピシッとしていれば私も面倒事に巻き込まれないんだろうか。
嫌なことがあったにもかかわらず心は少しふわふわしていて、彼の名前が知りたいなと思った。
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