治の帰宅まで待つ

そのまま自宅へと向かうバスへ乗り、治には『帰ったら少し時間とってもらってもええ?』とメッセージをいれておいた。

部活が終わるまでの少しの間、当然既読はつかないのだけれど何回もスマホを確認してしまう。

誕生日に治だけに送るメッセージ。

告白だと気づかれるだろうか。
もし気づいたとしたらなんて思うだろうか。

プレゼントの紙袋を眺めながら自室で考えていると、外から双子の喧嘩する声が聞こえてきた。

ハッとしてスマホを見たら治からは『家着いたら連絡するわ』ときていて、何故か侑からも『俺も行く』とメッセージが入っていた。

と、いうことはこの喧嘩の原因は私か。

治だけに声をかけたのが納得できなかったのだろうか。
でも侑のいるところで治に告白するわけにもいかない。

迷っていたのがいけなかったのか、無情にもインターホンの鳴る音が響く。

双子の声は止まっていないし、治だけじゃなくて確実に二人いる。

「名前〜?侑くんと治くん来たわよ〜?」

下から母の呼ぶ声まで聞こえて、もう逃げ場はどこにもない。

「今行くー!!」

諦めてリビングへ行くとムスッとした二人がいて、私を見るなりすごい剣幕で詰め寄ってきた。

「サムだけはずるいやろ!」

「名前は俺のこと呼んだんやからツムはとっとと家帰らんか!」

「はぁ!?俺今日名前からおめでとうって言ってもらってへんから言われるまで帰りませんけどォ!?」

「やったら今ここで言ってもらって早よ帰れ!」

180超えの男子二人にキレられる私の身にもなってほしい。

「二人ともお誕生日おめでとう」

私の声に喧嘩をピタリとやめ、二人は嬉しそうに笑った。

「やっぱ名前に言ってもらわんとな!」

「そう?まあ、喜んでもらえてるなら嬉しいけども」

「ほら、名前に言ってもらったんやからツムは帰れ」

「はぁ!?サムに言われんでも帰るわ!」

おや、と思った。
侑にしては随分素直だ。

「ありがとうな!」

私のことをぎゅっと抱きしめ、耳元で私にしか聞こえないくらいの小さな声で「告白するんやろ?頑張ってな」と呟いた侑に、いつから気づいていたのかと驚いた。

気づかれていた恥ずかしさから顔は真っ赤になったけれど、侑にもプレゼントを買ったのを思い出し慌てて引き留める。

「え、名前俺には?」

「あー、治のもあるよ。後で渡すから待っとって」

二人していらないと言っていたわりにちゃっかり貰う気でいるのは解せないけれど、買ったからには渡したい。

ところが、侑にプレゼントを渡し帰るのを見送った後すぐ、治が不機嫌そうな顔で「帰る」と言いそのまま外へと出てしまった。

「え、待って治!」

「ツムに抱きしめられて顔真っ赤にして、俺に見せつけて何が楽しいん?」

「見せつけるって…」

「名前は俺に用があったんと違うの?」

「そうだよ!治にプレゼント渡そうと…」

「でも先にツムに渡したやん!俺のなんか後でええって思ったんやろ?」

びっくりして言葉がでなかった。

侑に先に渡したのは侑が帰ろうとしたからだし、顔が真っ赤になったのは治のことが好きなことがばれていたからで。

何から話せばいいのかと迷っていたら、治は悲しそうな顔で「ほら、なんも言えへんやん」とそう溢した。

「告白、しようと思ってて」

「え?」

「プレゼント、渡すときに治に好きやって伝えようと思ってたから」

「名前、俺のこと好きなん…?」

「侑は、私が治のこと好きなの知っとったみたいで、さっき頑張れって応援してくれたんや」

「ツムが!?」

話していたら、段々と怒りが湧き上がってきた。

もっとちゃんと雰囲気とか考えてプレゼントも渡したかったし告白もしたかったのに、治が勝手に勘違いしたせいで何もかもが適当になってしまった。

「なのになんで勘違いするんや!侑のこと好きならなんで治と二人で残らなアカンねん!私が好きなんは治や!早よ返事せんかアホ!」

「お、俺も名前のこと好き、です」

半ば無理矢理言わせた返事に満足するしかない。
怒ってしまった以上、雰囲気もへったくれもないのだから。

「はい、プレゼント!私家戻るからまた明日な!」

投げるようにプレゼントを押し付け、半ば当たるように勢いよく閉めた扉は大きな音を立てたけれど、それでも私の怒りは収まらなかった。

両想いがわかったのに、なんでこんな気持ちにならなければいけないのだろうか。

でもそう思ったのも束の間で、しばらくしてからきた治からの『パスケース、大切にする。ありがとな』というメッセージと、可愛いキツネがハートを飛ばしているスタンプを見て嬉しさのあまり変な声がでたあたり私はチョロいのかもしれない。



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