侑の帰宅まで待つ
学校まで行く勇気もなくて、とりあえず双子が帰ってくるのを待つことにした。
一応侑には『帰ったら声かけて』とだけメッセージを送ってあるし、向こうも返信なり家に寄るなりしてくれるだろう。
どうやって告白しようかなんて考えたって仕方ないし、なるようになるの精神でぶっつけ本番で頑張ろう。
自室のベッドに転がって、告白が成功してもしなくてもこれで幼馴染はおしまいかと思うと妙にしんみりとした。
幼馴染だからって調子にのるなと上級生に呼びだされたこともあったし、酷い時には物を隠されもした。
あんまりそういう薄暗いところを双子には見せたくなくて明るく振る舞ったけれど、侑は必ず気づいてくれて上級生に怒ってくれたし、隠された物を一緒に探してくれもした。
普段冷たく見られがちだけれど、身内だと思ってくれれば情に熱いやつなのである。
私にとって侑はヒーローみたいだったのだ。、
ピンチに駆けつけてくれて、助けてくれる。
惚れないわけがない。
懐かしい記憶を思い起こしてしばらく横になっていたら、いつの間にか部活は終わりを告げていて、双子の声が遠くの方から耳に聞こえてきた。
メッセージには20分ほど前に『帰りに寄る』と来ていて、慌てて簡単ではあるけれど身支度を整えた。
ピンポーン
インターホンが鳴り、お母さんが出る前に玄関へと急ぐ。
「はーい!今行く!!」
プレゼントの紙袋を手にして階段を駆け降り、玄関の扉を開けると両手にすごい量のプレゼントを持った侑が立っていた。
「プレゼント、全部受け取ったん?」
「俺のために選んでくれたっていうからもらってきた」
「本命のコだけ受け取るとかやないんか…」
「もらえるもんはもらっといて損はないやろ」
ドヤ、と背後に大きな効果音が見えるような偉そうな態度で言う侑に、私のプレゼントなんてあげる必要があるのかと疑問に思った。
「プレゼント…買うたから渡そうと思ったんやけど、そんなにあるならいらへんか」
角名がああ言っていたから、他の子のは受け取らないで私のだけ受け取ってくれるんじゃないかってほんの少しだけ期待した。
勿論勝手に期待して裏切られた気持ちになった自分が悪いのだけれど、侑の両手いっぱいに抱えているプレゼントは私の心を最も簡単にどす黒く染めてくれたのだ。
「名前もくれるならもらうに決まっとるやん」
何を当たり前のことを、といった感じの侑に腹が立った。
侑にとって私は他の女の子と同列の扱いなのか。
「もともと侑、私のプレゼント今年はいらんて言うてたし」
「でもそれ俺に買うてくれたんやろ?なんでくれへんの」
「それは…」
「まあ理由なんてええわ。俺に買うてくれたんやからそれは俺のやろ?勿体ぶってへんで早よ渡してや」
ブチッ
あまりに不遜なその態度に、私の頭で何かが切れる音がした。
「うっさいわクソ鈍感男!他の女の子からもらったプレゼントと一緒に扱われたくないからに決まっとるやろ!!せめて家に置いてこいや!!隣の家やろ!?なんで両手いっぱいに抱えたままうちにくるんやボケ!!」
「はぁ!?プレゼントもらえるなんて知らんかったのにその言い草なんやねん!!別に俺が誰からもらってたって名前には関係あらへんやろ!!」
「せやな!!私には関係あらへんな!!関係ない私は侑の誕生日なんか知らんからとっととそのまま家帰れ!!」
売り言葉に買い言葉。
そして侑は何も悪くないのに当たり散らす自分に嫌気がさした。
勢いよく閉めたドアに、こんなんじゃいつまで経っても侑に想いなんか伝えられないし、伝えたとしても好きになってもらえるわけがないとため息がでる。
部屋に戻る気も起きなくて玄関に蹲っていたら、目の前のドアが勢いよく開いた。
「もらったプレゼント全部サムにやったから名前のくれ!!」
人の家なのにインターホンも押さずに勝手に入ってきた侑は、ふんぞり返って私に手を出してきた。
「なんで…」
「俺に買うてくれたんやろ!?いつもと違ってサムとお揃いのやないやつ!!」
「うん、そう」
「なら他の女からもらったプレゼントなんかいらん!名前のがもらえればええ!」
差し出された手に恐る恐る紙袋を渡せば、侑は満足気な顔をして嬉しそうに笑った。
勝手に拗ねて、勝手に怒ったのに侑はわざわざ家に帰ってプレゼントを置いて私の元へ戻ってきてくれた。
「私、侑のこと好きやねん」
「おん」
「侑は私のこと好き?」
「ずっと名前が一番や」
「ほんま?」
「当たり前やろ。いつまでもサムと同じが嫌で今年のプレゼント断ったんやぞ」
「言われなわからへんし…」
「いくらでも言うたるわ。名前が好きや」
「侑、お誕生日おめでと」
「おん!サムにもなんか買うてるんやろ?家で首長くして待ってるで」
「ほんま?すぐ行くわ」
自室にある治へのプレゼントをとり、靴を履き宮家へと向かう。
双子の誕生日は毎年宮家での夕飯になる。
いつもと同じだけれど少しだけ変わった関係が嬉しくて、侑にバレないように隠れて頬を緩ませた。
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