09

「名前ちゃん!!」

大きな声で名前を呼ぶと、驚いた顔をして名前ちゃんが振り返った。

「あれ、残るんじゃなかったんですか?」

「や、俺明日帰るし名前ちゃんともう少し話したくなってな」

「本当ですか?」

「ほんまほんま。俺、名前ちゃんのことよう知らんから教えてくれへん?」

名前ちゃんは目をパチクリと瞬き、不思議そうに首を傾げながら「何聞きたいですか?」と楽しそうに笑った。

「年は?」

「高1です!」

「いつからバレーやっとったん?」

「んー…気づいたら母と体育館に通ってたんで覚えてないんですよ」

「どこ住んでるん?」

「東京ですよ」

「あの、名前ちゃん、俺名前ちゃんのこともっと知りたいねん。もし名前ちゃんさえよければ…」

「侑さん」

俺が質問を止めて言葉を口にしようとしたら静かに、でもハッキリとした口調で制止された。

「私、夏休み明けたらバレー部入ります。それで、レギュラーとってみせます」

「おん」

「来…いや、再来年の春高、東京体育館でその続き聞かせてください。絶対追いついてみせますから」

「わかった」

俺の目をしっかり捉えた名前ちゃんの瞳は真っ直ぐやった。

差し出された右手を握り返し硬く握手をすると、先ほどまでの鋭い目が和らぎ「さ、宿に帰りましょうか」とふわりと微笑んだ。

ブランクもあるのにレギュラーなんてきっと並大抵の努力では勝ち取れないと思う。

でも、きっとこの子ならできると、約束を守ってくれると信じられる気がした。



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