04
先程自分の身に起きたことを話すと、治からも侑からも悪いことを聞いてしまったというなんとも言えない空気が漂った。
「名前、アテもないのに出てきたって言うし、次の家が見つかるまで俺の家に置くって話なんやけど」
「ツムはどうすんねん」
「サムの家に住めばええやろ?」
「え、俺は?」
「俺と二人暮らしや」
「アホか!俺の家ワンルームやぞ!こんなデカい男二人で暮らすとか勘弁してくれ!」
つい漏れた本音に治は私の顔をハッと見たけれど、やっぱり侑が勝手に言ってただけで現実的ではないのかとため息が出た。
「無理なら暫く漫喫とかで寝泊まりするしええよ」
「「それはアカンやろ!!」」
「でも行くとこもないし、正直家決まるまでの少しの期間やから別にどうってことないねん」
そう言ったのに二人とも難しい顔で考えこんでしまい、これなら初めから侑のとこに泊まるなんて言わなければよかったと思わずにはいられなかった。
「ツムの家に二人で泊まればええやん」
「侑のファン怖いし週刊誌にでも顔が出たら笑えないから嫌や」
「ほんなら俺の家に泊まる?」
「えっ、それはアカンやろ」
「別に彼女もおらんし俺はええけど」
「ほんま?なら治の家にお邪魔しようかな」
「いや、名前も女やで?サムと二人きりとか危ないやん」
話がまとまりかけたのに、侑が頑なにうんと言わない。
「治は私のことそういう目で見てへんから大丈夫や」
「そういう問題とちゃうやろ!」
「じゃあツムが一緒住んだらええやん」
「ちょっと治!」
「名前ちゃんのことなんとも思っとらんのやろ?」
「当たり前やん!名前やぞ?」
治は私の過去の気持ちを知っていながら何を言い出すんだ。
ただでさえ失恋したばかりで傷んでいる心に、侑の言葉がグサグサと刺さる。
「やったら泊めても問題あるわけないやんな?」
「あるわけないやろ!」
「それならツムと名前ちゃんがツムの部屋に住むんでええな」
「問題あらへん!」
売り言葉に買い言葉とはまさにこのことだろう。
治の挑発にのせられた侑は自分の発した言葉の過ちに気づいたけれど、時すでに遅し。
ニヤリと笑う治に恨めしい目をするもスルーされ、勿論私の反対意見なんて聞き入れてくれるはずもなく、私と侑の奇妙な二人暮らしが幕を開けたのだ。
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