05

治のせいで結局侑の家に住まわせてもらうことになり、差し当たって困ることが一つ。

「どこで寝るか、や」

侑の寝室には当然ベッドは一つしかない。

「侑が家主なんやからベッドやろ」

「いや、女の子ソファで寝かせるわけにはいかんやろ」

「バレーボール選手ソファで寝かす方が頭おかしいわ。それに、私はソファに収まるけど侑ははみ出るやろ」

反論しようと言葉を探すも出てこなさそうな侑に「決まりやな」とニヤリと笑いソファに座り込むと、本当に困った声で「名前が風邪ひいたら困るやん」と呟かれた。

「漫喫で寝ようとしてた女やで?ソファで寝かせてもらえるだけ嬉しいわ。やから侑はベッドで寝てな?」

「んー…」

「それよりお風呂入ってきたら?私も今日は疲れたから早よ入って寝たいねん」

納得のいってなさそうな侑の背中を無理矢理押し、お風呂場へと詰め込んだ。

ドアを閉め、ドアの向こうの侑に聞こえるくらいの声で「一人やったら辛かったから、ほんま感謝しとるんやで。ありがと」と伝えると、暫くの静寂の後「嫌なことは忘れたらええよ」と優しい声が返ってきた。

本当こういうところなんだよな、と思う。

高校時代から私が何か凹んでれば普段はそんな素振り見せないくせに優しくしてくれて、その不器用な優しさがあまりにも温かくて、気づけば好きになっていたのだ。

今日だってあの人混みの中途方に暮れていた私を見つけ出して、こうやって一人にしないでいてくれる。

好きになるにはもう遠い世界の人で、私のことなんか眼中にもないのだろうけれど、それでもこんな風に優しくされたら忘れていた恋心を思い出してしまうではないか。

侑がお風呂から出る前に、この感情に整理をつけなければ。

私と侑はただの友人。
可哀想だから助けてくれただけ。

大丈夫、気をつけていれば侑にはバレない。

だって侑は私のことをなんとも思ってないから泊めてくれるのだから。



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