06

風呂から出ると、名前は自分の世界に篭るかのようにヘッドホンを耳にしていた。

名前は嫌なことがあると椅子の上で丸くなって、気持ちが晴れるまで音楽を聴く癖がある。

テストの点が悪かった、姉と喧嘩した等理由は様々だったけれど、泣きそうな顔で口を尖らせて聴く様は小さな子どもを彷彿させ庇護欲を駆り立てられる。

普段は勝ち気な性格なのにふとした時に見せるその脆さは見ていて心配になって、俺が守ってやるんやと思うようになった。

今日もその格好で音楽を聴いているのをみると、見つけた時に気のせいかもと通り過ぎなかった自らの判断を誉めて讃えたい。

「名前、風呂上がったから入りーや」

名前を呼んでも音楽で聴こえないのか反応しない名前に、側まで行って肩を叩くと一瞬ビクッとして、すぐに「ごめん、お風呂だよね?すぐ入るわ」と無理に笑顔をつくって俺の方を振り向いた。

俺の前でくらい泣いてもええのにそれをしないのは、彼女のせめてもの抵抗なのかそれともプライド故なのか。

風呂へと消えた名前に、彼女が早く本心から笑える日が来ればいいと願わずにはいられなかった。



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