10
「侑、今週末なんやけど飲み会行ってもええ?」
名前との二人暮らしも慣れてきた頃、憂鬱そうな顔で名前がそう俺に言ってきた。
「別にええけどなんかあるん?」
「同僚に飲みに誘われてしもて…。家も早よ探さないけんしやっぱアカンよな!?」
「あー、家のことはええねん!家賃とか通勤時間の折り合いもあるやろし、ここならって思うとこが見つかるまでいてくれてええんやで」
正直名前に出ていかれると困るのは俺の方で、名前が気になる物件の資料を不動産屋でもらってきて悩んでいるのをここは方角がよくないとか些細なことでいちゃもんをつけて決まらないようにしている。
俺の家は通勤にも住むにも便利で、他のところと比べるとこれよりいい物件が見つからないというのもあると思う。
料理をする名前にとってはキッチンは妥協できないし、その上風呂トイレ別となればおのずとカップル向けの物件になる。
そうすると家賃はびっくりするほど高いし、安いところで探すと通勤時間が長くなるのだ。
そんなこんなで名前との二人暮らしは俺にとってはかなり順調で、それを知ったサムには「お前いつかバチ当たるぞ」と本気で軽蔑した目で見られた。
まあ、そうは言ってもずっとこのままというわけにもいかないだろうし、名前もいつかは出ていくのだけれど。
そんな風に俺が考えてるとバレたら適当な物件を見つけて逃げられそうなので、表面上は同情するていで名前には声をかけた。
「家探しは休みの日にやったらええよ?俺も付き合うたるし!」
「ほんまごめんな!ご飯はちゃんと作ってから行くからあっためればいいだけにしとく…」
「久々の外食なんやから楽しんできーや!」
そして俺はこの台詞を死ぬほど後悔する羽目になるのだ。
back